レナフォ永世特別顧問の宮脇昭先生が、2021年7月16日に逝去されました。93歳でした。
レナフォを育て、ご指導いただいた先生に深く感謝申し上げ、ご冥福をお祈りします。
先生のご意思をしっかり継承し、ふるさとの森づくりに一層の努力を傾注します。
プロフィール
国内ではタブノキやシイ、カシ類を中心とした常緑広葉樹の森、海外ではブラジル・アマゾンやマレーシア・ボルネオ、ケニアの熱帯林、中国・万里の長城の落葉広葉樹林など、その土地本来の樹林を十数年間で再生させる植樹事業の指導を、世界の各地で展開した実績を持つ植物生態学の研究と実践の第一人者。
当協会では、2008年9月の設立当初から特別顧問に就任していただき、メイン事業の森づくり専門家研修で「ふるさとの森づくりの哲学」の講義をお願いするなど基本的なご指導をいただいています。
宮脇氏が提唱する「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」は、要約すると、事前の植生調査によってその土地本来の主役の樹種類(潜在自然植生)を把握してその種子を採取し、幼苗を育てて従たる多種の幼苗とともに「混植・密植」する森づくりの方法です。苗木たちは、3年程度の草抜きなどの管理を経て、競り合い効果により数年から十数年で樹高10メートル以上の「土地本来のふるさとの森」に育つ、というものです。
宮脇氏は1958年、30歳の時にドイツの国立植生研究所研究生として留学し、2年半にわたって所長のラインホルト・チュクセン教授から潜在自然植生を探る理論と実践の徹底指導を受けました。1980年から10年がかりで、南は沖縄から北は北海道まで日本列島の植生を、全国各地の大学の植物学者の協力を得て調べ上げて、全10巻、本文6000ページの『日本植生誌』を刊行。植樹指導の実践は、主要な企業や都道府県、市町村、諸団体などとのコラボで半世紀近くにわたり、これまでの指導植樹の総本数は4000万本を超えるとされます。
2011年3月11日の東日本大震災に際しては、早い時期に現地の植生被害の調査に入り、大津波の襲来で根こそぎ失われた海岸の防風林や神社・鎮守の森、地域の環境保全林の再生事業に向けて、行政はじめ政治経済関係者、学識者らに幅広く呼びかけて、森林の再生事業の実現に先駆的に貢献。その後宮城、岩手、福島県などで行われている「森の防潮堤」づくり活動の実践指導に尽力されています。
参考図書
「魂の森をゆけ」(一志治夫)集英社インターナショナル
「魂の森をゆけ」(一志治夫)新潮文庫
「宮脇昭果てなき闘い」(一志治夫)集英社インターナショナル
略 歴
1928(昭和3)年
1952(昭和27)年 1958(昭和33)年 1961(昭和36)年 1973(昭和48)年 1985(昭和60)年 1993(平成5)年 同 年 2007(平成19)年 2008(平成20)年 |
岡山県に生まれる
広島文理科大学生物学科卒業 ドイツ国立植生図研究所研究員(~60年) 広島文理科大学より理学博士号 横浜国立大学環境科学研究センター教授(~93年) 同 研究センター長兼任(~93年) 横浜国立大学名誉教授 財団法人国際生態学センター長(~2007年3月) 財団法人地球環境戦略研究機関 国際生態学センター長 NPO法人国際ふるさとの森づくり協会 特別顧問 |
主な編著書
「見えないものを見る力 潜在自然植生の思想と実践」(藤原書店)
「人類最後の日 生き延びるために、自然の再生を」(藤原書店)
「森の力 植物生態学者の理論と実践」(講談社現代新書)
「瓦礫を活かす 森の防波堤」(学研パブリッシング)
「『森の長城』が日本を救う!」(河出書房新社)
「次世代への伝言」(高層建築家 池田武邦氏と共著、地湧社)
「日本の植生」(学研教育出版)
「4千万本の木を植えた男が残す言葉」(河出書房新社)
「三本の植樹から森は生まれる」(祥伝社)
「森はあなたが愛する人を守る」(フィトセラピスト池田明子さんと共著、講談社エディトリアル)
「森は地球のたからものシリーズ 全3巻 ①森が泣いている ②森は命の源 ③森の未来」(ゆまに書房)
「木を植えよ!」(新潮社)
「The Healing Power of Forests The Philosophy behind Restoring Earth’s Balance with Native Trees」(佼成出版社)
「苗木3000万本 いのちの森を生む」(NHK出版)
「いのちを守るドングリの森」(集英社新書)
「あすを植える」(毎日新聞社)
「森よ 生き返れ」(大日本図書)
「日本植生誌 全10巻」(編著、至文堂)
「植物と人間」(NHK出版)
学会および社会活動等
1974(昭和49)年
1981(昭和56)年 同 年 1984(昭和59)年 1996(平成8)年 1997(平成9)年 2000(平成12)年 2006(平成18)年 |
通産省エネルギー庁環境審査会顧問( ~2001年)
西独ゲッチンゲン大学名誉理学博士 西独ザールランド大学名誉哲学博士 タイ国立メージョウ農工大学名誉農学博士 国際生態学会(INTECOL)会長(~99年) ドイツハノーバー大学名誉理学博士 華東師範大学顧問教授 マレーシア農科大学名誉林学博士 |
受 賞
1970(昭和45)年
1973(昭和48)年 1975(昭和50)年 1991(平成3)年 同 年 1992(平成4)年 1995(平成7)年 1996(平成8)年 1997(平成9)年 2000(平成12)年 2002(平成14)年 2003(平成15)年 2006(平成18)年 同 年 2014(平成26)年 同 年 2015(平成27)年 |
毎日出版文化賞「植物と人間」
サンケイ出版文化賞「人類最後の日」 神奈川文化賞 1990年度朝日賞(「日本植生誌」完成により) ドイツ・ゴールデンブルーメ賞 紫綬褒章 ドイツ・チュクセン賞 日経地球環境技術大賞 日刊工業新聞 技術・科学図書文化賞「緑環境と植生学」 勲二等瑞宝章 第11回日本生活文化賞 個人賞「世界に鎮守の森を」 第1回日本生態学会 功労賞 植生学会 学会特別賞 第15回地球環境国際賞「ブループラネット賞」受賞 第72回山陽新聞賞 第5回「KYOTO地球環境の殿堂」入り 第9回「後藤新平賞」 |